2025年6月9日に公開された『あかね噺』第161話「勝っちまうんじゃ」。
今回はこの話を読んだ感想と、今後の展開を予想していきます。
あかねが“二つ目”――つまり一人前になってから、初めてライバルたちとガチンコで競い合う舞台。それが「瑞雲大賞」です。同門の阿良川ひかるや、古典落語を身につけた三明亭からしといった、かつての因縁のライバルたちとの再戦が見どころになりそうなので、予想を交えながら感想をまとめていきます。
志ぐまの芸を継ぐために
あかねは日本に帰国してから、師匠・志ぐまの芸を会得するために、三つの噺――「芝浜」「死神」「……」の習得に挑んでいます。
今回はその中でも、志ぐま師匠の十八番である「死神」を習得するために、志ぐま師匠がその噺を教わった“先代・椿屋正明”の実の息子である“当代・椿屋正明”に稽古を願い出ます。
しかし、最初は門前払い。
正明師匠は自分と父との確執を抱えているようで、破門された父を認めさせるために落語家の道を選んだあかねに、自分を重ねているような描写もありました。
ただ、それ以上に大きな理由として、あかねの「表現の自由さ」と、正明師匠の落語の方向性が完全に対極であるという点が挙げられます。
自由な表現を捨てない限り、あかねには椿屋の芸はできない――そう突きつけられる形になったわけです。
しかしあかねは、自分のスタイルに固執するあまり成長できないのなら、それこそ本当の自由ではない、と啖呵を切ります。その覚悟を汲み取った正明師匠は、「実力を示せたら稽古をつけてやる」と条件を出します。
ブレないあかね
自分のスタイルを貫きつつ、その対極である表現方法にも真っ向から挑むあかね。この姿勢はまさにバトル漫画の主人公のようで、読んでいてワクワクさせられます。
無茶振りと信頼
瑞雲大賞に出場が決まったあかねに対して、後見人である阿良川一生師匠は「笑わせずに勝て」という無茶な条件を出します。
そして今回、あかねが選んだ噺は、正明師匠がかつて口演した「吝い屋」。
これはドケチな男が節約術を説く短編集のような作品で、正明師匠が披露した際は、作品を忠実に演じきって大爆笑をさらいました。
落語にもいくつかのジャンルがあり、志ぐま師匠が得意とする「人情噺」であれば、今のあかねの実力でも問題はなかったはずです。
しかし、「吝い屋」はどちらかといえば現代のギャグ漫画に近い作品で、表現の方向性がまったく異なります。難易度は非常に高いといえます。
一生師匠は誰に対しても当たりが強いものの、実力のある者に対してはしっかりと認めるタイプの人間です。入門前から落語会の重鎮である彼に実力を認めさせると啖呵をきったあかねに対しても、内心ではその力を認め、期待していたのだと思います。
そして今回の「笑いを封じて勝て」という条件は、そんな一生師匠なりの信頼の証だったのかもしれません。
因縁のライバルたちと再び
今回の瑞雲大賞には、二つ目の中でもかなりの腕を持つメンバーが集まっているようです。
中でも注目すべきは、声優としても人気を博し、阿良川一剣の弟子として落語でも急成長している「阿良川ひかる」。
そして、可楽杯では古典落語を現代風にアレンジして会場を沸かせた「三明亭からし」。現在は古典落語の重鎮・円相に弟子入りしており、持ち前の頭の回転に加えて、古典への理解度も格段に上がっていると見られます。
この三人は、入門前の可楽杯で一度激突しており、そのときは幼少期から志ぐまに落語を教わっていたあかねが圧倒。
しかし前座錬成会では、あかねはひかるに敗北を喫しています。
今や三者三様に力をつけており、誰が勝ってもおかしくない状況です。
……個人的には、からしが好きなので、ここらで二人に一泡吹かせてほしいところ。
瑞雲大賞・予選の結果と今後
瑞雲大賞は予選と本選に分かれており、全22名が6枠しか無い本戦出場をかけて争います。
予選の段階からすでに激戦が繰り広げられ、特にひかるとからしは会場を沸かせていました。
一方あかねは、一生師匠からの「笑わせるな」という無茶な課題に対して、「吝い屋」の構成を活かし、怪談・滑稽・食べ物・芝居といった複数ジャンルの表現すべてを高水準で仕上げることで勝負に出ました。
そして――笑いを取らずに、見事本選出場を決定。
しかし予選の順位は、からしが1位、ひかるが2位、あかねは5位という結果に。
からしもあかねの口演を聞いて、ややがっかりしたようなリアクションを見せていました。
これは、可楽杯のときとそっくりな展開です。
当時も一番注目されていたのはからしで、続いて知名度の高いひかるが期待されていた構図。
あのときとまったく同じ展開になるとは限りませんが、ここからあかねが“何か”を見せてくれることを、期待せずにはいられません。
まとめ
今回は、あかね噺第161話「勝っちまうんじゃ」の感想と今後の展開予想をまとめました。
笑いを封じられた状態で、あかねがどこまで食らいつけるのか。ひかるとからしという強敵を相手に、あかねがどんな“自由な落語”を披露してくれるのか。
ここからの本選が、ますます楽しみです。
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