漫画やアニメでよく耳にする「主人公補正」。
「なんであいつだけ助かるの?」「都合よすぎて冷めた」……そんな違和感を感じたこと、ありませんか?
でもその“補正”、本当に不自然なものなのでしょうか?
今回は、「主人公補正とは何か?」という基本的な意味を整理しつつ、
実は存在しないという説を論理的に解き明かしていきます。
主人公補正とは?意味と使い方を解説
例えば以下のような場面です:
- 実力差をひっくり返す大逆転が何度も起こる
- ギリギリの場面で都合よく仲間や奇跡が登場する
- ラブコメでは、地味な主人公がなぜか異常にモテる
こうした展開を「ご都合主義」「リアリティがない」として嫌う読者も少なくありません。
なぜ主人公補正は存在しないと言えるのか?
① 物語の数だけ異なる世界があり、主人公が存在する
世の中には、漫画・アニメ・小説・映画・ゲームなど、数えきれないほどの物語が存在しています。
その一つ一つには独自の世界観・常識・ルールがあり、その世界にたった1人の主人公が存在する構造です。
たとえば――
- 『ワンピース』のようなバトル漫画では、能力や覇気が当たり前の世界
- 『スラムダンク』のようなスポーツ漫画では、現実的な努力やチームワークが重視される世界
これらはまったく別の価値観・前提のもとに成り立っており、同じ基準で優遇や不自然さを比較すること自体がナンセンスです。
そして重要なのは、「同じ世界に複数の主人公がいるわけではない」ということ。
物語の数だけ世界があり、世界の数だけ“主人公になり得る人物”が存在している。
だからこそ、それぞれの世界に1人くらい「主人公補正級の活躍を見せる人物」がいたとしても、不自然ではないのです。
むしろ、それが物語として語られるほどの人物だった――そう捉えるのが自然です。
② 現実世界でも主人公補正級の人物は存在する
今私たちが生きているこの現実世界も、ひとつの“物語”と見なすことができます。
そしてこの世界にも、まるでフィクションの主人公のように活躍している人たちがいます。
たとえば――
- 大谷翔平選手
- 藤井聡太名人
- 井上尚弥選手
- 『ワンピース』の尾田栄一郎先生
彼らのように、圧倒的な才能や実力、努力、運を兼ね備えている人が現実に存在します。
もしこれがフィクションの中の出来事だったら、「ご都合主義だ」「主人公補正だ」と言われてもおかしくないレベルです。
しかし、これは実際に起こった現実の出来事。
つまり「主人公補正級の活躍」は、現実でもごくわずかに存在し得るのです。
そして、物語とはそうした希少な存在にスポットを当てて描かれるもの。
だからこそ、どの作品にも“補正級の人物”がいるのは、自然なこととも言えるのです。
③ 主人公は「後付けで選ばれる」存在
ここで少し視点を変えてみましょう。
主人公とは「最初から選ばれた特別な存在」なのでしょうか?
たとえば『ドラゴンボール』の孫悟空。
彼は数々の死地を乗り越え、ライバルたちと切磋琢磨し、世界を何度も救いました。
確かに、振り返れば「主人公補正の塊」のような人物です。
でも、逆に言えば――そうした奇跡的な出来事をいくつも乗り越えてきたからこそ、
「物語の中心人物=主人公」として選ばれたとも言えるのです。
『デスノート』の夜神月も同じです。
「主人公だからデスノートを拾った」のではなく、たまたま拾ってしまったことで物語が始まり、主人公になったのです。
つまり、主人公とは「活躍する運命にあった人」ではなく、
活躍した結果として“後から”主人公に設定される存在なのです。
現実の大河ドラマも“後付けの主人公”
この「後付け構造」のわかりやすい例が、NHKの大河ドラマです。
毎年、織田信長・徳川家康・坂本龍馬など、その年の主人公が異なります。
彼らは「主人公になるために活躍した」わけではありません。
実際に歴史の中で目覚ましい功績を残したからこそ、後になって「物語の主役」として描かれるようになったのです。
つまり、「主人公だから活躍した」のではなく、
「活躍したから主人公として語られる」という構造が、フィクション・ノンフィクション問わず共通しているのです。
まとめ:主人公補正は“存在しない”という見方もできる
ここまでの内容を整理しましょう。
- 物語の数だけ世界があり、それぞれにたった一人の主人公がいる
- 現実世界にも補正級の人物は存在し、それが不自然ではないことを示している
- 主人公は最初から決まっているのではなく、活躍した人物を後付けで“主人公”にしている
- 大河ドラマのように、現実世界でも「活躍が物語化される」構造が存在する
つまり、「主人公補正があるように見える」のは、私たちが読者・視聴者の視点で物語を外から見ているからであり、
物語世界の内側から見れば、それはごく自然な構造なのです。
「なんで主人公だけ都合よく成功するの?」と疑問を持つのは自然なことですが、
その背景にある構造や世界観の違い、物語の本質を知れば、また違った角度から作品を楽しむことができます。
主人公補正が苦手だった方も、少し視点を変えてみると、
物語がより深く、面白く感じられるようになるかもしれません。
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