2025年6月26日に公開された『キングダム』第841話「大きな歪み」。
今回は、韓の正式な降伏が中華全土に伝わる様子と、それに伴って生じる心の“歪み”や後悔、そして洛亜完の最期が静かに語られました。
前回の話を振り返りたい方は、以下の記事をご覧ください!
韓降伏が各所に伝わる
前回の840話で新鄭が無血開城され、韓は正式に秦に降伏しました。
今回はその知らせが、各地に広まっていく場面から始まります。
韓への援軍を食い止めるため、趙・魏と戦っていた蒙恬と王賁の元にもその報が届きます。
新鄭攻略戦からまだ1日しか経っていないこともあり、2人ともすぐには信じられない様子でした。
とはいえ、新鄭が落ちた以上、趙・魏側にとって戦う理由はもはや存在せず、両軍は自国へ引き返していきます。
これにより、秦は歴史上初めて、完全に一国を滅ぼすことに成功したのです。
韓王家をはじめとする多くの人物の決断と行動が、ここに至るまでの大きな要因であったことは間違いありません。
しかし、蒙恬の言う通り、この2人の現場での働きも非常に大きかったと思います。
筆者としては、信・蒙恬・王賁の3人が再び顔を合わせる日が待ち遠しい限りです。
韓滅亡が意味する「詰みの一手」
韓が滅んだことを、各国の首脳陣も「想定はしていた」としつつも、実際に現実として受け止めるには大きな衝撃だったようです。
かつて李牧が言っていたように、地理的に見ても韓の滅亡は、秦が中華全土へと討って出る足がかりになります。
筆者自身、戦争における戦術的なことには詳しくありませんが、
かつて魏の山陽を秦が奪った際、李牧と春申君は「中華は詰みかけた」と言って合従軍を起こしました。
今回の韓滅亡は、山陽の比にならないほどの“詰みの一手”に近いように感じます。
それほどまでに、今回の出来事は中華全体にとって重大な意味を持つものでした。
斉王の評価
韓滅亡に対して、斉王だけは周囲とは異なる考えを持っていました。
側近たちは、韓王の無血開城を「気の弱さが招いた暴挙」だと見下します。
しかし、斉王はそれを「勇気ある行動」として高く評価していました。
斉王は以前、嬴政の目の色が変わっていなければ「中華の舵取りを任せても良い」と言っており、
将来的に秦に降伏する意思をにじませていました。
おそらくこのことを知っているのは斉王ただ一人で、秦が残る4カ国を滅ぼし斉に向かってきたときには、
韓王と同じく無血開城を選ぶ――その覚悟があったのかもしれません。
だからこそ、斉王は韓王の“民を守るための決断”を、王族として深く理解し、尊重していたのでしょう。
「国を明け渡してでも守るべきものがある」という感覚は、確かに王族にしかわからないのかもしれません。
謎の悲鳴の正体が判明?
838話で新鄭に到着した羌瘣と羌礼の2人にだけ聞こえていた“謎の悲鳴”。
これまでも当サイトではさまざまな考察を行ってきましたが、今回その正体がようやく明かされたように感じました。
2人は、新鄭全体から“感情の歪み”のようなものを感じ取っていました。
その歪みとは――
降伏という結末を受け入れられない人々の苦痛、何もできなかったという無力感、
そして降伏を選んだ王族たちの葛藤や後悔といった、無数の感情が渦巻いたものだと思います。
それが悲鳴のような形で、羌瘣と羌礼のように感受性の鋭い者たちに届いていたんだと思います。
寧の後悔
斉王の言葉にあったように、国を守るために無血開城を選んだ寧も、深く精神を病んでいました。
そして今回、洛亜完の最期を聞いたことで、彼女は完全に廃人のような状態に陥ってしまいます。
無血開城の合図である鐘を鳴らす前に寧は、「鐘を鳴らしても鳴らさなくても後悔することになる」と語っていましたが、
今まさにその“後悔”の重みに押しつぶされできるように見えました。
とはいえ、鐘を鳴らさずに戦っていたら、もっと多くの犠牲が出ていたのは間違いありません。
読者目線で見れば、やはりこれが最善の選択だったのでは?と思わずにはいられません。
そんな寧のもとに、無血開城を提案した謄が現れました。
彼はどんな言葉を彼女にかけるのか――次回、大きな見どころとなりそうです。
洛亜完の最期
洛亜完率いる反乱軍を討つため、録嗚未が討伐軍を率いて出陣し、結果として反乱軍は全滅したと報告されました。
ここまで物語の鍵を握ってきた洛亜完の最期が、描写なしに“報告だけ”で済まされてしまったのは少し寂しさも感じます。
しかし、彼は前回の話ですでに覚悟を決め、すべてをヨコヨコに託して新鄭を出ていきました。
もしあの場面が彼の“最期”だったとするならば――
それ以上に潔く、そして美しい別れはなかったのかもしれません。
洛亜完生存の可能性は?
839話でも考察しましたが、総合的に見て、洛亜完がここから生存している可能性は非常に低いとは思います。
しかし、彼の本当の“死の場面”が描かれていない以上、可能性はゼロではありませんが…
今回、討伐軍を率いた録嗚未は、謄や寧とは違い、洛亜完の反逆の真意を理解していませんでした。
だからこそ、余計な情をかけずに確実に洛亜完を討ち取れる“適任者”だったとも言えます。
洛亜完が真に望んだ「民を守るための死」は果たされたのか――
それを知る術は、まだ残されているのかもしれません。
まとめ
今回の841話では、無血開城によって静かに落ち着いたはずの新鄭に、なお渦巻く感情の“歪み”が描かれました。
寧の深い後悔、民の苦悩、そして洛亜完の最期――韓という国の滅亡は、それぞれの心に大きな爪痕を残していきます。
次回、無血開城を提案した謄が、今の寧に何を語るのか。
そのやり取りこそが、この戦の本当の“決着”となるのかもしれません。
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